住宅調査員はどんな人を選べばよい?
前回の記事では、住宅診断の適正価格についてお伝えしました。その内容ですが、現在は調査員に一級建築士を選びましょうと、おススメする調査会社が多く、そのために調査価格が高額になっているというお話しをさせていただきました。
今回の記事では、住宅調査員は一級建築士であれば良いのか?どんな人が良いのか?そんな疑問があると思いますので、あなたに合った住宅調査員の選び方をお伝えいたします。

はじめに調査員を選ぶのに必要な情報
まずは調査依頼をする物件の下記のポイントを調べ、同じようなものを設計・現場監督問わず調査員が業務で造っていたかが重要です。
- 構造(木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造)※他にもあります
- 築年数
- 建物の大きさ(延べ床面積、何階建て、建物の最高高さ)
- 建物種類(戸建て住宅、マンション区分所有、マンション一棟)
住宅調査員を選ぶときにプロフィールの見る項目
ほとんどの住宅調査会社には、調査員のプロフィールがあるので、まずはそこを見てください。
※()内は関係のあるポイントです。
- 年齢 (築年数)
- 取得資格 (構造、建物の大きさ、建物の種類)
- キャリア(構造、建物の大きさ、建物の種類)
- 所在地(調査物件との距離)
この項目の中で一番重要なのはキャリアです。順にご説明いたします。
1. 年齢のポイント
高齢な方のメリット・・・経験した知識が豊富な方が多い。
デメリット・・・現在の設備など、新しい情報が不足していることがある。床下・小屋裏侵入調査などが難しい場合がある。
若い方は反対に、高齢な方のメリットとデメリットが逆な場合が多い。
※もちろん個人差がありますのでご確認ください。
2. 所有資格のポイント
住宅診断に関係する資格は以下のものがあります。
- 一級・二級・木造建築士(国家資格)
- 一級・二級施工管理技士(国家資格)
- 宅地建物取引主任者(国家資格)
- 既存住宅状況調査技術者(国家資格)
- 公認ホームインスペクター(民間資格)
この他にもありますが、メインの資格はこの5つです。
・建築士の資格について
調査依頼をする住宅の構造(木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造)と、規模(階数・延べ床面積)でお考え下さい。なぜなら建築基準法も構造と規模、それと用途によって変化するためです。(用途は住宅なので、考えなくて大丈夫です。)
基本的に戸建て住宅やマンション(区分所有)の調査であれば、一級・二級建築士どちらでも問題はありません。木造の戸建て住宅の調査なら木造建築士でも問題ないでしょう。
一級建築士にお願いすべき具体的な住宅の規模は、マンション一棟全部や4階建て以上の建物や、床面積が1,000㎡以上の木造・300㎡以上の鉄筋コンクリート造と鉄骨造の建物は一級建築士にお願いしたほうが良いかもしれません。
・施工管理技士の資格について
住宅調査員の取得資格の中では、一番重要だと言えます。
なぜなら最短でも3年、通常だと5年から7年という実務経験が必要だからです。実務経験は、指定された工事種別(建築一式工事・大工工事など)で、施工管理・施工監督・設計監理(工事監理)この3種のうち、どれかの業務を行っていないと受験することができません。なので施工管理技士をもっている方は、工事現場で経験した専門の知識が必ずあり、会社で設計や積算だけしていては取得できない資格だということです。
そして住宅調査は、実際の家を見てチェックするので、施工管理技士は選ぶ時の資格の重要項目になるのです。
・宅地建物取引主任者の資格について
住宅の購入や売却、リフォームするべきか売却か、などをお考え中の方であるならば、この資格を持っているほうが様々な条件を合わせて考えられるのでおススメです。
・既存住宅状況調査技術者の資格について
取得していれば一通りの調査員としての知識を、テキストで知っているという資格です。建築士の資格があれば、実際の住宅を見ていなくても取得可能なので優先順位は低いです。法律で、不動産会社が行う状況調査報告は、この資格を持っているもの以外は調査ができない、という資格です。
・公認ホームインスペクターの資格について
紹介した中で唯一の民間資格で、建築士の資格が無くても取得可能です。申し訳ありませんが、私は取得していないので、取得者の能力がどれぐらいかは分かりません。
3. キャリアのポイント 重要
一番重要な能力は
あなたが選ぼうとする人が、工事現場でチェック業務をしていたかをご確認ください。経歴でいうと、設計監理・施工管理・現場監督・現場管理・工事監理、この5つの中でどれかの経歴が書いてあればチェック業務を行っています。
なぜこのキャリアが大事かと申しますと、住宅調査ではどこに瑕疵ができやすいか、他にも見える部分の状況で見えないところの瑕疵を推測することができ、これはテキストの知識だけではほとんど気付くことができず、これまで実務でチェック業務していなければ身につくことがないのです。
特に現場にて工事監理をしていれば、法的な瑕疵の知識があり、どのように不具合ができ、どう改善してきたかという実績があるはずです。この能力が一番調査員に最適だといえます。
前経歴の長さ(多さ)
これも長かったり、多かったりすれば良いのかは個人差が大きいので一概には言えません。1年目から一人でバリバリやる会社もあれば、何年も一人に任せてくれない会社もあるからです。ただ設計・現場監督どちらでも5年ぐらいの経験があって何かの国家資格を持っているなら十分な経験はできているはずです。
それとよく経歴に2,000件以上の設計をしたと書いてある方がいますが、その方が40年以上やっていても年間50件以上ということになり、注文住宅やフルリフォーム(リノベーション)などですと、お客様との打ち合わせが多いので物理的に無理があります。なので建売住宅をパズルのように作り申請業務だけやっていた可能性が高く、現場での経験がまったくなく調査員としての知識が不足していることがあります。
住宅調査員に多いキャリア
どんなキャリアの方が多いのかお伝えします。※()内は所有資格
- 前職でハウスメーカーやゼネコンにて建築設計をしていて、独立して設計事務所をしている(一級建築士・二級建築士)
- 前職でハウスメーカーやゼネコンにて建築設計をしていて、引退して住宅調査をしている(一級建築士・二級建築士)
- 前職でハウスメーカーやゼネコンにて現場監督をしていて、住宅調査会社に就職している(一級施工管理技士・二級施工管理技士・二級建築士)
- 前職で工務店にて建築設計、または現場監督、または建築設計と現場監督兼務をしていて、独立して設計事務所をしている(一級建築士・二級建築士・一級施工管理技士・二級施工管理技士)
ほとんどの方が4パターンだと思われます。
根拠ですが、現場監督で一級建築士を持っている方は少なく、いたとしてもキャリアアップのために取得しているので勤務している会社を辞めません。次に工事監理(設計監理)をメインにしている方はとても少なくあまり存在しません。工務店にて自分で設計し現場監督も一貫して行っていた方も一級建築士は少数です。
キャリアの結論
一級建築士の資格を持っていて、前職でチェック業務を行っていた方が、住宅調査会社で調査をしている割合は圧倒的に少ないのです。
選ぶべき基準は、一級建築士の資格を持っているかではなく、キャリア(経歴)を見ていただき設計監理・施工管理・現場監督・現場管理・工事監理をメインで行っていたかを確認していただくことです。
追記
一級建築士で設計をメインでやっていた方は、メインの住宅の構造が鉄筋コンクリート造や鉄骨造の人が多く、木造の知識は薄い可能性が高いです。前職の業務以外のことは、ほぼ分からないのが建築業界なので、調査を依頼する住宅の構造に合わせて、担当の経歴をご確認ください。
4. 所在地のポイント
所在地の確認が必要なのは、せっかく選んでだとしても、その方が遠方に住んでいる場合は指名できないか、高額な交通費が必要になるからです。
まとめ
結果、選ぶべき住宅調査員のポイントの優先順位は、
- 調査する物件のポイントに合った経歴を持っている(特に構造)
- 現場でチェック業務を行っていた(キャリアに設計監理・施工管理・現場監督・現場管理・工事監理のどれか)
- 建築士の資格を持っている(建築の法律にくわしい)
- 施工管理技士の資格を持っている(現場での実務経験が必要なため)
- 見つからない場合は住宅調査の経験が長い、調査会社の社員の方
この順番で優先順位は高く1.から5.まであてはまるのが理想の調査員です。
少し長くなってしまいましたが、今回は住宅調査員の選び方をお伝えいたしました。次回は住宅構造別のメリットとデメリットをお伝えいたします。
プロフィール

- ホームインスペクター
-
1983年生まれ
広島県出身
広島工業大学専門学校卒業
建築の設計・施工・解体を経験し様々な知識を併せ持っています
2級建築士・1級施工管理技士・宅地建物取引主任者の資格を保有しています
最新の投稿
お知らせ2025年11月30日2025年の年末年始の休日について
投稿記事2025年11月24日住宅の保証内容と保証期間
投稿記事2025年11月13日住宅の種類と構造別のメリット・デメリット、価格や寿命と耐震性の比較
投稿記事2025年11月5日住宅調査員はどんな人を選べばよい?

